2020年春の情報処理技術者試験が新型コロナウィルスの影響を受けて中止になる、という衝撃発表がありましたが、情報処理技術者試験以外にも様々なIT業界関係者、ITエンジニア向け資格試験が存在します。
今回は、ブログ・コンテンツ管理システム(CMS)としてよく使われるWordpressの開発言語としても知られる『PHP』のスキルを認定するPHP技術者認定試験について、見ていきたいと思います。
冒頭でも書いた通り、PHP技術者認定試験とはWeb開発を得意とするプログラミング言語であるPHPの知識・スキルを試される資格試験です。実施団体は2011年に設立されたPHP技術者認定機構という日本の社団法人です。
社団法人というと、少し胡散臭さを感じる方もいるかもしれません。しかし、協賛には、技術解説書で有名なオライリーメディアの日本法人である、オライリー・ジャパン、インターネットサービスプロバイダー(ISP)のニフティ、日本マイクロソフト、そしてNTTコミュニケーションズといった大手企業が名前を並べています。まっとうな団体だと言えるでしょう。
PHP技術者認定試験の中身を見ていくと、2020年3月現在、「初級試験」「上級試験/準上級試験」の二つの試験が行われています。いずれも、CBT(Computer Based Testing)方式のため、基本的には、年中いつでも受験可能です。
※CBT方式とは、指定された試験会場のパソコンを使って試験を受ける方式です。情報処理技術者試験のITパスポートと同じ受験方法というと、イメージが湧きやすい方もいるかもしれません。
「上級試験/準上級試験」は7割以上の得点で上級、5割以上7割未満の得点で準上級という風に点数に応じて、認定される方式です。
さらにいうと、9割以上得点したうえで、所定の文章(論文)を添えて、PHP技術者認定機構に申請すると、「PHP 技術者認定ウィザード」の選考対象になります。提出された論文は、他の上級試験/準上級試験合格者に展開・有効性に関する投票が行われ、肯定的な投票結果が一定数を超えると、ウィザードの資格を取得することができるようになります。
試験の難易度ですが、初級試験から順番に見ていきましょう。
初級試験は学生やWebデザイナー、新人プログラマーなど、初学者を主な対象としており、それほど難しくありません。認定教材である、オライリー社の『はじめてのPHP』からの素直な出題も多く、運営団体である、PHP技術者認定機構も、独学者の合格率は75%、認定スクール受講生の合格率は85%、という数値を一つの目安としています。
上級試験/準上級試験は3年以上の実務経験のある、一人前のPHPプログラマーを対象にしています。そのため、初級試験から、一気に難易度が上がります。
実は準上級試験という区分が生まれたのは、2015年からで、それまでは上級試験と初級試験しかありませんでした。この二つの試験のレベル差があまりに大きかったため、準上級試験という“ギャップを埋める区分”ができたと言われています。
ウィザード取得者は年に2、3人しかいません。論文の内容がウィザードと認定する水準に満たしていないという理由で合格者がいない年度、さらに、そもそも、応募者0人という年度すらあります。
PHPというプログラミング言語でソースコードが書ける、ということだけでなく『PHPの発展に貢献できる知識と発想力を持つこと』(PHP技術者認定機構HPから引用)が求められるのです。
基本的には初級試験であっても上級試験/準上級試験であっても、主教材を読み込んで、記載されているスキル・テクニックを理解し頭に入れたうえで、実際に自分でコーディングして、身に着ける流れとなります。
なお、主教材は初級試験の場合はオライリー社の『はじめてのPHP』、上級試験/準上級試験は『プログラミングPHP』(どちらもオライリー社の出版物)となります。
ちなみに、どちらも定価がそれなりにするため、ブックオフなどで中古本を買っても良いですが、“版”には気を付けてください。例えば、『プログラミングPHP』は2020年時点の最新版は2014年リリースの第三版です。2007年に発売された第二版から、いくつか記載が変わっています。
なお、学習時間ですが、初級試験はまったくの初学者の場合1~3か月、3年程度の経験者の場合、1日~1週間程度の学習を行って受験する方が多いようです。やはり、初学者の場合、最初から、ソースコードを書く感覚がつかめる人と、そうでない人で、学習時間に差がついてしまいます。
上級試験/準上級試験は上でもご紹介した通り、一気に難易度が上がるため、3年程度の経験者でも、1~3か月程度、時間数にすると、50時間~150時間程度の学習を行っている方が多いようです。
転職活動時、履歴書の資格欄が埋まっていないより、埋まっている方が良いに決まっています。
繰り返しになりますが、特にPHP技術者認定試験の上級・ウィザードは難関資格です。PHPの利用頻度が高い会社・現場への応募の際は、非常に効果のある資格だと言えます。
また、PHP自体、Webサイト開発案件で非常にニーズの高いプログラミング言語の一つです。求人件数も安定しています。
初級試験についても、IT業界で働きたいと考えている方が、自己アピールのために取得するのに“丁度良い資格”だと思います。
初学者の自己研鑽という意味でも、良い資格です。情報処理技術者試験と比較して、ITパスポートより難しく、基本情報処理技術者試験よりも簡単で、しかも、今後のITエンジニア人生で必須となるコーディングスキルを身に着けられる資格試験です。
そうしたことを勘案すると、PHP技術者認定試験は、転職で有利となる資格試験の一つと言って、間違いありません。
上記の通り、PHP技術者認定試験の取得にはメリットがありますが、正直ベースでいえば、必須の資格という訳ではありません。
もっというと、PHP技術者認定試験を取得していないからと言って、困る場面、不利になる場面はあまりない、というのが現実です。
PHP技術者認定試験を持っていなくても、PHPを巧みに操れるプログラマーはたくさんいます。そもそも、PHP技術者認定試験は2012年開始と歴史が浅いです。受験者数も限られています。「他の応募者はPHP技術者認定試験を取得していたのに、自分だけ取得しておらず、書類落ちになった」という状況は、まずあり得ません。
PHP技術者認定機構は怪しい社団法人ではないことは、すでにご紹介しましたが、やはり、国家試験である情報処理技術者試験や、MicrosoftやAWS、ORACLEなどの大手ベンダーが実施する各種ベンダー資格や、海外でも実施されている、LPIC やPMPなどよりも、転職市場で“格の低い資格”なのも事実です。
PHP技術者認定試験に限らずですが、資格試験に合格するために学習した過程は一生の財産になります。また、自分でどれだけ「私は優秀なPHPプログラマーだ」と言ったところで、見せられる成果がなければ、意味がありません。
すでにお伝えした通り、PHP技術者認定試験は必須という訳ではありません。しかし、PHPに関わっているエンジニア、これから関わりたいと考えている人たちは、一度、受験しておいた方が良い資格試験なのは間違いありません。
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