実際の人と人とが会話する言語にも、様々な言語があるように、プログラミング言語にも様々な言語があります。
今回はプログラミング言語の歴史を語るうえで、絶対に外すことができない重要プログラミング言語の一つALGOL(アルゴル)についてご紹介いたします。
テクフリでフリーランス案件を探してみるALGOL(アルゴル)とは英語の「algorithmic language(アルゴリズム言語)」にちなんだ名前ですが、はじめて聞いた、という人の方が多いと思います。
聞いたことがあるとすれば、アラフィフ世代のベテランエンジニアか、そうでなければ大学などで情報系の学生だったとか、社会学系統の各部でIT技術の発展と社会の変化を学んでいたとかなどの理由で“コンピューター史の中で聞いたことのある人”くらいだと思います。
現在においては、ALGOL(アルゴル)を書ける人もほとんどいません。
ALGOL(アルゴル)は完全に廃れた過去の言語と言えます。
そのようなALGOL(アルゴル)が重要プログラミング言語だと言える理由は、ずばり“多くのプログラミング言語にとって、ご先祖様といえる存在”だからです。
生物の進化の系統樹のプログラミング言語版を作るとすると、大半の言語がALGOL(アルゴル)を起点とする樹に連なる、そういう言語なのです。
「ALGOL(アルゴル)系言語」とみなされている言語としては、主要なものだけでも、C 言語系(Objective-C、C++、Java 、C#)にIBMメインフレームでよく使われるPL/Ⅰ、世界最強の戦闘機ともいわれるF-22“ラプター”のソフトウェア周りにも利用されなど、軍事機器など安全性・確実性が重視させる環境での利用が多いAdaなどが知られます。
Perl系(Python、Ruby)言語もC言語の影響を受けているため、広い意味で「ALGOL(アルゴル)系言語」と言えるかもしれません。
どういったところが「ALGOL(アルゴル)風」なのかというと、例えば「制御構造の入れ子(ネスト)」を何層にも重ねられるようになったプログラミング言語はALGOL(アルゴル)が初めてなのです。
今どきの言語だと「制御構造の入れ子(ネスト)」は当たり前ですが、ALGOL(アルゴル)以前の言語や同時期に誕生している言語、例えばCOBOLやFortranにはそもそも存在しません。
さて、ここからは改めて、ALGOL(アルゴル)の歴史を時代とともに振り返っていきたいと思います。
ALGOL(アルゴル)が生まれたのは、1950年代後半です。
この50年代後半という時期は、Fortran(1957年開発)などアメリカ発のプログラミング言語が勢力を拡大しており、それに対抗する形でヨーロッパ発の世界的なプログラミング言語を目指して誕生しました。
1958年にスイスのチューリッヒ工科大学で提案されたものが最初のALGOL(アルゴル)とみなされており、この最初のALGOL(アルゴル)を、特にALGOL58と呼ぶことも多いです。
ちなみに、今なおバリバリで案件で採用されているCOBOLはALGOL(アルゴル)より一年遅い1959年誕生です。
このように50年代後半は第一世代プログラミング言語(高級言語)が相次いで登場した重要な時代の分岐点なのです。
少々話が逸れました。
ALGOL(アルゴル)に話を戻すと、この頃のALGOL(アルゴル)は基本的に研究者がアルゴリズム研究に使うために利用していただけで、商用システムの開発はあまり行われなかったようです。
これには深い理由があります。
そもそもALGOLとFortran・COBOLには根本的な違いがあります。
開発国が異なる(ALGOLはヨーロッパ。Fortran・COBOLはアメリカ)といったことよりも、もっと重要なプログラミング言語としての設計思想の違いです。
それはずばり、ハードウェアとの関係性についてまったく異なるアプローチを取った、という点です。
そもそもFortranは開発元のIBMが自社コンピューター上で動作せるために作ったものですし、COBOLはアメリカ政府の事務処理システムのためのプログラミング言語として生み出されたものです。
この二つの言語は、どんなハードウェア上で動作させるか、最初から明確なイメージがあって、そのうえで開発されたプログラム言語なのです。
一方のALGOL(アルゴル)には、どんなハードウェア上でも動作させられるようにしたい、という開発者たちの思いがあり、言語の仕様にもそれが反映され、入出力周りの標準仕様すらありませんでした。
結果、特定のハードウェアに依存しない汎用性から学術分野ではデファクトスタンダードになれた一方で、実績やコストが重視されるビジネスの世界では遠慮されるようになったといえるでしょう。
この特性が良くも悪くもALGOL(アルゴル)の将来に大きな影響を与えたといえます。
1960年のパリでALGOL(アルゴル)を大きく変える国際会議が開かれました。
当時、もっとも偉大と思われていた13人の計算機学者(※)が約二週間にわたる会議で新たなALGOL(アルゴル) 、通称ALGOL60を生み出したのです。
※ヨーロッパだけでなくアメリカからも参加者がおり、その中にはFortranの開発者であるジョン・バッカスも含まれています。
このALGOL60は、単なるALGOL58の改良版にとどまらず、世界的なプログラミング言語となれるよう、様々な工夫が施されました。
ALGOL60こそ、いわゆるALGOL(アルゴル)系言語の起点になるALGOL(アルゴル)であり、単にALGOL(アルゴル)と言われた場合は、通常ALGOL60のことを指すと考えて間違いありません。
60年代半ば頃には、アカデミックな世界、学会や学術論文、教科書に出ているアルゴリズムの記述例は基本的にALGOL(アルゴル)で書くのが普通、つまりデファクトスタンダード化されました。
またALGOL(アルゴル)の発展した 60年代から70年代前半にかけて、特定ハードウェアへの実装を目指した派生版などが数多く登場しており、そうしたALGOL(アルゴル)派生プログラミング言語は70ほどあったと言われています。
ちなみに、ALGOL(アルゴル)の面白いところは西側諸国だけでなく、東側でもよくつかわれていた、という点です。
ソ連版スペースシャトルと言われるブランもソフトウェア周りはALGOL(アルゴル)だったそうです。
一方で相変わらず入出力周りの標準仕様すらなく、商用利用の世界では使われないという状態は続き、商用利用においてはCOBOLの一強が目立つようになります。
さらに、商用利用が進まないこともあってか、「国際標準化機構(ISO)」での標準化もなかなか進まず、ALGOL(アルゴル)がISOによって定められるのは、なんと1984年です。
ちなみに、日本はISOでの標準化を待たずに早い段階でJIS C 6210として規格制定されていたようです(なぜか、JISを管理している、日本工業標準調査会のDBに制定年度が情報として出ていない)。
ALGOL(アルゴル)の終焉時期は80年代になります。
ALGOL(アルゴル)の衰退を決定付けたのは1972年にC言語が登場したことでしょう。
C言語は汎用性の高さ、利便性の高さ、ドキュメントの充実度など、様々な面で当時の他のプログラミング言語を圧倒し、商用はもちろん、学術分野においても幅広く利用されるようになりました。
そうして、ALGOL(アルゴル)は役割を終えたプログラム言語となっていったのです。
ちなみに、日本のALGOL(アルゴル)に関するJIS規格は1983年に廃止となっています。
すでにお伝えした通り、すでにALGOL(アルゴル)は使われなくなったプログラム言語です。
「S-algol」という英国生まれのALGOL(アルゴル)派生言語が、Java仮想マシン(Java VM)に移植されているので、一応、今どきのWindowsやandroidアプリをALGOL(アルゴル)で開発する、なんてことも不可能ではないようです。
とはいえ、わざわざエンジニアを探すのも大変なALGOL(アルゴル)を使いたい、という案件もないため、現実に仕事としてALGOL(アルゴル)を利用する局面はまずないでしょう。
コンピューター史に名前を刻まれた偉大なプログラミング言語ALGOL(アルゴル)についてご紹介しました。
「この言語とこの言語って、こういう関係性があるのか。こういうところは確かに似ているかも」という発見につながり、また、次に習得するプログラミング言語探しのヒントになるので、現役プログラマーにとっても、プログラミング言語の進化の系統樹を理解するのは、大変に意義があることです。
たまには、こうしたコンピューター史を学習してみてはいかがでしょうか。
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