2016年度に経済産業省が公表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、当時のIT人材の不足数は17万人。2019年には人材供給がさらに減少傾向となり、不足数は拡大することが予測されています。
そして情報セキュリティ人材は13万人が不足しており、2020年には不足数が20万人弱に拡大することが明記されています。実際に2016年当時から2019年を比較するとサイバー攻撃の激化やAIに関連する技術の進歩があり、IT業界では情報セキュリティ人材や先端IT人材の需要が拡大しています。
また今後の需要や人材不足について参考にしておきたい情報として政府の施策・意向があります。経済産業省はIoT推進ラボと称する取組を行うなど、都心部だけでなく地方におけるIoTも推奨しています。
政府がIoTを推奨していることを考慮すれば、日本のITエンジニアは需要が今後も継続的に見込むことができ、それに応じて人材不足も続く可能性があるといえるでしょう。
今後最も需要が高いと予測される職種は2つあります。それは機械学習エンジニアとセキュリティ技術を有するインフラエンジニアです。これらの職種の需要が増えると予測できる理由には、AIの導入が各業界で始まっていること、そして政府によるIoTの推奨が関係しています。
少子高齢化の影響もあり、国内の人材不足はIT業界以外の業界にも及んでいます。AIによる業務の自動化は、少ない人的リソースでも業務をすみやかに遂行できる可能性があります。そのため既に導入を始めている、もしくは検討している企業が少なくありません。
またIoTがより普及し、あらゆるモノがインターネットに接続される社会になると、インフラを支える技術はより重要なものとなります。インフラを守るためには高度なセキュリティ技術が必要です。このような近年のIT業界の需要を考慮すると、機械学習エンジニアとセキュリティ技術を有するインフラエンジニアは今後より大きな需要が生じる可能性のある職種だといえるでしょう。
企業が欲しているIT業界の人材は、セキュリティに関する技術を有するエンジニアです。ITエンジニアの需要はフロントエンド、バックエンド問わずにありますがサイバー攻撃のリスクが常にある昨今ではセキュアにプログラミングできるスキルが欠かせません。
セキュリティエンジニアではなかったとしても、企業から求められる人材になるためには、セキュリティに関する技術や知見は必要になるといえるでしょう。またIT業界において需要があるプログラミング言語は数年単位で変化するものです。
IT業界の変化に柔軟に対応できることから、マルチなスキルを持つフルスタックエンジニアを求めている現場も少なくなりません。一つの技術に特化しているエンジニアも重宝されますが、企業から常に求められる人材になることを目指すなら、需要を理解してスキルを磨き続ける姿勢も大切になるといえるでしょう。
外国語ITエンジニアの採用増は、IT業界に限らない採用ニーズの変化でもありますがこの方向性が続くことを考慮すると、現場も変化していくことが予想できます。国内で働くなら英語が急に必須となる可能性はそこまで高くないと考えることができますが、楽天のような英語を公用化する会社が増える可能性も否定はできません。
また現場に外国籍ITエンジニアが増えれば、業務は日本語が前提であったとしても社内の人間関係をスムーズにするために英語は役に立つ可能性が高くなります。実際に経済産業省が運営するMETI Journalで一社のIT企業が200人の外国人ITエンジニアの採用を行ったことを取り上げています。
採用した人材はアジアのトップ大学卒業者が中心となっており、採用後は海外の拠点を中心として配属させています。前述のIT企業はグローバル共通の評価制度を採り入れるなど、2009年から外国人材の継続的な採用を実施している企業でもあります。
そして同社は外国人材を採用する理由として、外国人材の学習意欲の高さやキャリア志向の強さを上げています。ITエンジニアとして成長に対するモチベーションが高いため、外国人材を採用することが会社の競争力を高めることにもつながっているのです。
競争の激しいIT業界では業務スピードの早さが武器にもなるため、国内のITエンジニアは外国人材と比較されることも考えなければいけません。そして同社において技術を理由に採用される外国人材は、日本語能力を問わずに採用されています。そのため外国人材の採用が一定数を超えた企業に関しては、英語が公用化される可能性もあるといえるでしょう。
このような外国人材の採用に注力する企業が将来的に増えていくと必然的に英語の重要性は高まります。ITエンジニアとして活躍する上でもスキルアップを目指すなら、英語の情報を読み解けることは当然のスキルでもあります。市場から求められるITエンジニアであり続けることを一つの目的とするのであれば、最低限の英語力はITエンジニアにとって必要なスキルだといえるでしょう。
日本と海外のITエンジニアの違いとして注目しておきたいポイントは勉強時間の違いです。提供されている教育や国家がどの程度ITを重視しているのか、という影響が大きいと考えることもできますがその違いは経済産業省が公表している「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」から知ることができます。
前述の資料では日本のITエンジニアのうち、業務で必要かどうかを問わず自主的に勉強している人の割合は約19%。それに対してインドネシアは47%、ベトナムは30%です。タイは28.2%、中国は25.2%となっているため、これらの国と比較すると日本のITエンジニアは勉強不足であることが分かります。
またITエンジニアの会社の教育や研修制度に対する満足度は、米国は46.6%、インドは41,2%、タイは29%、インドネシアは27%です。これに対して日本のITエンジニアの会社の教育に対する満足度は5%しかありません。このような統計結果から国内では個々のITエンジニアのスキルアップへ向けた意識を高めること、そしてITエンジニアを雇用する企業は教育体制の見直しが課題でもあると考えることができます。
このような学習時間と教育制度の違いだけがITエンジニアの優劣を分けるわけではありませんが、日本と比較すると海外には優秀な人材が多い可能性があることは否定できないといえるでしょう。
ここまで紹介してきたように、ITエンジニアは今後も需要が見込める職種であることに間違いはありません。しかし外国語人材の採用が進んでいることや、現場では今後も新しい技術が求められる可能性があることを考慮すると、ITエンジニアであれば安泰というわけではありません。需要を満たすITエンジニアであり続けるためには、長期的にスキルを磨き通づける必要があるからです。
ITエンジニアとしてのスキルは短期間の学習で習得できるものではありません。普段から学習する生活習慣を身につけることが欠かせません。将来の安泰について考えるなら、日々のスキルアップを習慣化させることが有用な手段であることは間違いないといえるでしょう。
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