ディープラーニングは、私たちの生活を根底から変える可能性のある技術です。画像や音声の認識、言語処理など、日常生活に関わる分野でも活用が進んでいます。本記事ではディープラーニングの基本的な仕組みなどについて、実用例とあわせて詳しく解説します。機械学習やディープラーニングなどの分野に少しでも興味がある方は、ぜひ最後までご一読ください。
ディープラーニングは機械学習の一種であり、人間の脳神経系を模倣した「ニューラルネットワーク」を用いてデータから特徴を抽出してタスクを処理します。入力データからパターンや特徴を抽出するために、ディープラーニングでは複数の層から構成されるニューラルネットワークを使用します。それぞれの層が異なるタイプの情報処理を担当することで、複雑な特徴や抽象的な概念を識別できるのです。
ディープラーニングを活用することで、従来の手法では難しいとされていた複雑なタスクの処理が可能となり、生活を便利にするだけではなくビジネスシーンにおいても革新をもたらすと考えられています。
先述のニューラルネットワークは、大きく以下の3つの層で構成されています。
入力されたデータは入力層において受け入れられ、隠れ層を経て出力層から結果として出力されます。隠れ層では、入力層から受け取ったデータの処理を行います。具体的には、隠れ層では入力層からの信号を重み付けして、活性化関数と呼ばれる関数を通して処理を行います。この過程においてデータの重要な特徴やパターンが抽出されます。ディープラーニングではこの隠れ層を複数重ねることによって複雑な情報処理を実現しており、データの理解を深めるのに役立てています。このような仕組みによって、従来の機械学習よりも高い精度でデータの認識や予測を可能としているのです。
隠れ層の数を増やして処理の回数を増やすことで複雑な処理が可能となることから、ディープラーニングの「ディープ」は隠れ層の数(深さ)に由来しています。後ほど詳しく解説しますが、画像認識や音声認識などさまざまな分野において活用されています。
ディープラーニングと機械学習はどちらも人工知能(AI)の一種ですが、それぞれの定義について曖昧に理解されてしまうことがあります。さらにディープラーニングは機械学習の一種であることから、人工知能(AI)>機械学習>ディープラーニングという包括関係にあることがわかります。
機械学習とディープラーニングの主な違いとしては、データの学習方法が挙げられるでしょう。一般的な機械学習においては入力データからあらかじめ決められた特徴量を抽出して、学習を行います。ここでの特徴量は人間の手によって設定するため、主観的な判断が入ってしまうことが懸念されます。
一方でディープラーニングにおいてはネットワーク自身がデータの特徴を抽出するため、人間による主観的な判断が入らないのが特徴です。一般的な機械学習はスパムメールの判別や顧客分析などに活用される一方で、ディープラーニングは主に画像認識や音声認識などにおいて活用されます。ディープラーニングではより高い精度で分析を行える一方で、大量のデータが必要とされるのがデメリットとも言えるでしょう。活用したい分野や課題の種類に応じて、適切な手法を使い分ける必要があります。
機械学習エンジニアについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
機械学習エンジニアとは?仕事内容や必要なスキル・資格を徹底解説!
ディープラーニングの仕組みやAI・機械学習との関連について解説してきましたが、実際にディープラーニングはどのような場面において活用されているのでしょうか。ここではディープラーニングの代表的な4つの実用例をご紹介します。
ディープラーニングの代表的な実用例として、音声認識が挙げられます。音声認識とは、私たちが話す言葉をコンピューターがテキストに変換する技術です。スマートフォンの音声アシスタントや翻訳システム、声だけで操作できる家電製品など、身近な場面でも広く活用されています。
画像認識は、画像や動画から複雑な情報を抽出して識別を行う技術です。ディープラーニングの発達により、自動車のナンバープレート認識、個人の顔認証システム、医療画像における疾病の識別といったタスクが、以前よりも格段に高い精度で実行可能となりました。
異常検知とは、システムやデータセットで普通ではない動きやパターンを見つけることです。例えば工場での品質管理において製品の欠陥を見つけたり、金融市場で不正な取引を検出したりするシステムがその例です。IT分野においてはコンピューターネットワークに対する不正な侵入を発見するなど、幅広い分野でセキュリティの向上に役立てられています。
自然言語処理(NLP)は、人間とコンピューター間における自然な言語処理を実現するための技術です。文章を自動で作成したり、ユーザーからの質問に答えたりするチャットボットシステムの開発においても活用されています。その他にも、大量のテキストから情報を取り出したり、文章を要約したりすることも可能となりました。
これまでご紹介してきた通りディープラーニングの活用は多岐に渡りますが、ここではディープラーニングの代表的な種類を4つ、具体的に解説していきます。
畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)は、特に画像認識の分野で活用されているニューラルネットワークのモデルです。CNNは以下の層を持つのが特徴です。
畳み込み層ではまず、画像の局所的な特徴を抽出します。具体的には隣接するピクセル間における色の変化などが挙げられます。次にプーリング層では、画像のどこに対象物があっても判別できるようにするため、特徴の移動による影響を受けないように調整を行います。全結合層ではそれらの特徴をもとに、最終的な判別を行います。CNNは画像の中にいる犬と猫を区別する、画像内の物体を検出するといったタスクに活用されます。
再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)は、自然言語処理など時間に沿って変化する一連のデータを扱うのに適しているモデルです。一般的なニューラルネットワークでは入力層から中間層(隠れ層)、出力層へとデータが伝搬されていくのに対して、RNNでは中間層からの出力をその時刻での出力層だけではなく次の時刻への中間層へも入力として受け渡します(以下の図のイメージ)。
過去の情報と現在の入力の両方を考慮して出力を生成するため、音声認識や自然言語処理などのタスクに活用しやすいモデルです。自然言語処理を例に、以下の文章の認識について考えてみましょう。
(例)私は鳥を飼っています。
こちらの文章を「私は」「鳥を」「飼って」「います」という文節に分けて考えます。それぞれの文節を単独で見ると、複数の意味で捉えられる文節もあるため正確な意味を認識することが難しいでしょう。したがって、人間が文章を読む時と同様に単語同士の繋がりなどから意味を予測する必要があります。RNNを活用すれば、すでに認識した単語とのつながりを考慮しながら次の単語の意味を推測するという処理が可能となるのです。
長・短期記憶(LSTM)は、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)を改善したモデルとも言える特徴を持ち、長期間にわたるデータの関連性を処理するのに優れています。従来のRNNでは、複数の層で計算を繰り返していく中で、距離の遠い情報同士の依存関係が消失してしまうというデメリットがありました。LSTMでは過去の情報を長期的に保持できる「記憶セル」と、記憶しておく情報を制御できる「忘却ゲート」という仕組みによって従来のRNNよりも高い精度を実現しています。特にテキストや音声などの連続したデータを扱う際に、その長期的なつながりを認識するのに役立ちます。
敵対的生成ネットワーク(GAN)は、創造性に富んだディープラーニングの形態で、2つのモデルが競争しながら学習を進めます。1つは新しいデータを生成し、もう1つはそのデータが本物か偽物かを判断します。このやり取りを通じて、リアルに見える画像や音声、テキストを作り出すことが可能です。GANは新しいアートの作成や既存データの拡充に大きく貢献しており、新しいタイプのデータを生み出したり既知のシナリオを進化させたりするのに非常に有効です。
ディープラーニングは、音声や画像の認識、言語処理、異常検出などの分野で大きな進歩を遂げ、私たちの生活や産業に深く影響を与えています。ディープラーニングには様々なモデルがあり、非常に将来性の高い技術だと言えるでしょう。ディープラーニングは絶えず進化を続け、今後も技術の未来を形作る重要な役割を担うことが予想されます。
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