新型コロナの拡大をきっかけに社会が大きな変化を遂げた2020年。苦境に陥る企業・業界も少なくありません。新型コロナによる失業者の数は7万人を超えるという報道もあります。
こういう先が見えない世の中で、「手に職を付けたい」とシステムエンジニア(SE)へとキャリアチェンジを考えている方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、システムエンジニアになるために必要な条件や資格、そして、資格の取得方法について、現役SEが解説してみたいと思います。
システムエンジニアとして活躍する方の経歴は様々ですが、一般的には「情報学部」や「理工学部」を卒業後にIT企業に入社、もしくはフリーランスとなってシステムエンジニアとなるパターンです。
上記のような学部ではプログラミングなどについて学ぶ機会が多く、企業としてもエンジニアとして活躍できる人材を探す上で、情報系学部に注目する傾向が強くなってきています。しかし言うまでもなく、全てのシステムエンジニアが理系学部出身というわけではありません。文系の学部出身者がシステムエンジニアとして活躍していることも多いです。
その他に多いルートとしては、情報系の専門学校やスクールでITスキルを身に着けて、IT業界に飛び込むパターンです。大学の情報系学部ではITスキルを「学問」として学びますが、専門学校やスクールでは、現場経験豊富なエンジニアから、ITスキルを「業務テクニック」として習得できるメリットがあります。スキルや知識を体系的に身に付けたい場合は、スクールを利用してみるのもいいでしょう。
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システムエンジニアを目指せる条件について、より具体的に解説していきます。システムエンジニアに向いている人の特徴などもありますので、未経験の方もぜひ参考にしてみてください。
みなさんが気になっているであろう、「未経験でもシステムエンジニアを目指せるか?」について、現役システムエンジニアが本音で語らせていただきます。結論から言ってしまうと、専門学校やスクールを卒業した上でIT業界を志望するのであれば、業界未経験の方でも、システムエンジニアとして業界デビューを飾れる可能性はそれなりに高いです。
理由としては、すでにお伝えした通り、現場経験豊富なエンジニアから実践的な指導を受けられるだけでなく、卒業後の就職先を紹介してくれる専門学校・スクールも多いためです。ただし、独学でITスキルの習得を進めた業界初心者だと、厳しいかもしれないです。もちろん、第二新卒で応募可能な若い方であれば、業界未経験かつ独学の方でも、システムエンジニア枠で採用してれくる会社も確かに存在するので、可能性はゼロではありません。
しかし、自身の能力をアピールする方法について、よく検討した方が良いでしょう。一般的な方法としては、「ポートフォリオを公開する」、「資格の取得」などが挙げられます。資格の取得については改めてご説明します。
突然ですが、システムエンジニアとプログラマー、この二つの職種の違いはお分かりになりますでしょうか。この二つの職種は「システム開発者」という面ではよく似ています。会社によっては、プログラマーとシステムエンジニアの違いを意識せず、まとめてシステムエンジニアとしている組織もあるように感じます。
しかし、プログラマーとシステムエンジニアを明確に分けている会社があるとすれば、一般的には、プログラマーはあくまで「システム開発のためにプログラミングする人」なのに対して、システムエンジニアには「設計などの上流工程に参画し、クライアントを含めた関係者と折衝を行うこともできる人」と明確な区分をしているはずです。
システムエンジニアになるには、大きく下記のスキルが不可欠です。
小規模の案件だと、自身が実質的にプロジェクトマネージャーを務めることもあります。個人的な意見でしかありませんが、私の周りのシステムエンジニアはおおむね、「多くの人から好かれる、勉強熱心で真面目な常識人」が多く、たまに「少々破天荒だけど、周りを巻き込む不思議な魅力のあるエネルギッシュな人」がいらっしゃるように思います。
企業や人事ごとの好みがあると思うので、絶対ないとは言えませんが、学歴はあまり関係ありません。筆者自身、文系出身のシステムエンジニアです。学歴に関係なく、システムエンジニアになることが可能です。
もちろん、業務を行う上で必要なITスキルを保有していることが必須ですが、コミュニケーションスキルや業界・企業理解など、ITスキル以外の面では、情報系出身でIT業界しか知らない方よりも、むしろ、私のような文系出身者や他業界からシステムエンジニアになった方のほうが、優位性を感じることもあります。
年齢制限については、実質的にはあると思います。多くの企業の求人票に「長期的なキャリア育成のため、35歳までに限らせていただいております」と書いてあるのではないでしょうか。この30代半ばというのが、一つのポイントなのかな、と思います。
システムエンジニアは「ITスキル+総合的な人間力」が試される職種です。総合的な人間力は他業種である程度、育成できると思いますし、ITスキルについても、専門学校・スクールである程度は学べると思います。
しかし、それらの経験は、他業種での実績、教育機関で学んだ知識でしかありません。システムエンジニアとして実際の業務での経験ではありません。通常、ある程度以上の現場慣れが期待されている40歳を超えているのに、“システムエンジニアとしては若葉マーク”というのは少々、厳しいかと思います。
「業界知識が豊富なので、設計やクライアント交渉はお任せください」ということであれば、システムエンジニアとしてデビューできる可能性もありますが、そうでない場合にはコンサルタント職など、別のポジションでご活躍することをおススメします。
システムエンジニアという職業は、例えば医者や弁護士のように、試験をクリアし、資格を得ないとできない仕事ではありません。逆に言えば、誰でもシステムエンジニアになることができます。つまり、「私はシステムエンジニアだ」といくら連呼しても、連呼するだけでは評価されない世界です。
そのため、先述の通り「ポートフォリオを公開する」、「資格の取得」などの方法にて、自身のスキル・知識レベルを証明できるようにしたうえで、求職活動を行うのが好ましいです。
日本のIT国家資格である「情報処理技術者試験」を構成する資格試験の一つです。そもそもITパスポートは“ITを利活用する者”のための資格試験です。つまり、ITシステムのユーザーとなる人向けの資格試験であり、ITエンジニアのための資格試験ではありません。そのため、ITパスポートを取っていてもIT業界では基本的には評価されません。
それでは、なぜ、この資格の受験をおすすめするかと言いますと、IT業界にいままで縁がなかった方が、ITに触れる“はじめの一歩”として、丁度良い難易度の資格試験だからです。しかもCBT方式(テストセンターでのWeb試験)のため、いつでも受けることが可能です。
あえて極端な言い方をするならば、「ITパスポート」になかなか合格できない場合はITに関して苦手意識が強い可能性があります。そういう意味でも、これまでITと関わりのなかった方が、自身のIT業界への適性を判断する際の試金石となる資格試験とも言えるでしょう。
基本情報技術者試験も「情報処理技術者試験」を構成する資格試験の一つです。ITパスポートは“ITを利活用する者”のための資格試験でしたが、基本情報技術者試験は、“情報処理技術者”のための資格試験です。
日本が行うITエンジニアのための資格試験というところで、IT業界では非常に評価が高い資格試験の一つであると同時に、「IT業界に三年いても基本情報技術者試験が取れない人は、IT業界に向いていない」と言われることもあります。まさに、ITエンジニアにとって登竜門のような位置付けの資格試験です。
このように、もとからIT業界にいた方にとっては、持っていて当たり前の資格ですが、業界未経験者にも関わらず、基本情報技術者試験を取得しているとなると、転職活動などにおいて大きなアドバンテージになります。プログラミングスキルが問われる問題が出現するなど、ITパスポートよりも難しいですが、取得することをおすすめしたい資格試験です。
応用情報技術者試験は基本情報技術者試験の上位となる資格試験です。基本情報技術者試験を取得し、数年の経験があるシステムエンジニアやプログラマーを主な対象者としています。
IT業界においては、新卒採用者の場合、20代半ばから30代前半までに取得するように要求している企業が多く、30歳以上の中途採用者の応募条件にしている会社も少なくありません。
このように中堅以上のシステムエンジニア向けの資格試験であり、基本情報技術者試験よりも難しいですが、実はプログラミングスキルを問われる問題を回避できます。そのため、文系出身の方にとっては、基本情報技術者試験よりも応用情報技術者試験の方が、試験合格に向けた勉強は取り組みやすいかもしれません。
システムアーキテクト試験は応用情報技術者試験よりさらに上位のグレードとなる“高度情報技術者試験”の一つです。応用情報技術者試験に合格できる技量のあるエンジニアの中でも、さらに専門性の高いエンジニアのための資格試験です。
普通は業界未経験者が受けるような資格試験ではありません。しかし、上級システムエンジニアを目指す方にとって、一つのゴールとなる資格試験ですので、名前だけでも覚えておいてください。
アメリカのソフトウェア会社であるORACLEが実施する資格試験がORACLE MASTERです。試験内容としては、ORACLE社が発売するデータベース関連の製品である「Oracle Database」に関する技術力を確認するものになっています。「Bronze」が最下位で、「Silver」「Gold」「Platinum」という風に上位の資格が設計されています。
ちなみに、ORACLE MASTERのように、ベンダーが自社製品の理解度を測定するための資格試験を主催することがありますが、この手の試験のことをベンダー試験と呼びます。更新世になっていたり、商品のバージョンアップに合わせて、資格試験のバージョンも更新されることが多いので、一度取ったが、いつの間にか失効していた、ということもよくあります。
資格取得のための勉強法としては次の3つです。
個々人の向き不向きや、それぞれにメリット・デメリットがあります。それぞれを簡単にご紹介いたします。
書籍を使って学習するメリットはオフラインで、自分の好きな場所・タイミングで学習を進められるという点です。デメリットは、メールなどを使って著者等の有識者に問い合わせできる書籍も一部ではありますが、基本的には質問などができないという点です。
基本的には、“解説が手厚い問題集+必要に応じて補助教材(重要項目を網羅した文庫本サイズのものなど)”もしくは“模擬問題などがついている解説本”が良いかと思います。基本情報技術者試験や応用情報技術者試験などの情報技術者試験に関しては、特に多様な関連書籍がありますので、自分が続けられそうなものを選ぶとよいでしょう。
メリットは、有識者に質問がしやすく、オンラインに限られますが、自分の好きな場所・タイミングで学習を進められる点です。デメリットとしては、オンラインに限られるため、学習サイトだけでは隙間時間活用ができない、また、習慣化できないと、そのうち講義ビデオを見ないことになりがち、という点です。
無料で過去問を公開しているところもありますが、本格的な講義が受けたい方はUdamyがおすすめです。アメリカ発のオンライン学習サイトですが、日本のベネッセが業務提携しており日本人にとっても非常に使いやすいサイトになっています。
資格試験対策講座を実施している学校に通うのもひとつの手段です。メリットは、有識者に質問がしやすく、また、他の受講者と一緒に学ぶことで、モチベーションが高い状態で学習を進められる点です。
デメリットとしては、オンラインに限られるため、学習サイトだけでは隙間時間活用ができないという点です。また、他の方法に比べて、経済的・時間的コストがもっとも掛かってしまいます。
プログラマーとシステムエンジニアの違いという話の中で少し触れましたが、システムエンジニアにはITスキルが必要不可欠ですが、それだけでは厳しいです。特にシステムエンジニアに求められるのは、以下の二つのスキルです。
・コミュニケーションスキル
→クライアントを含めた関係者と折衝を行うことが求められることが多いため。
・マネジメントスキル
→計画的にシステム開発が進められるように、同じユニットのプログラマーや後輩システムエンジニアを統率することも求められるため。
この二つは資格試験などで証明できませんが、これまでの経験ベースに適性があることを伝えられると思います。自己PRなどをうまく活用しましょう。なお、資格試験の学習だけでは「開発スキル(実装力)」は身に着かないかと思います。資格試験とは別に、プログラミング学習も進めましょう。また、学習状況も自己PRなどで伝えるようにしましょう。
システムエンジニアになった後のことが気になる、という方も少なくないでしょう。ということで、システムエンジニアのキャリアプラン・キャリアパスについても簡単に説明しておきましょう。
システムエンジニアという職種は「設計などの上流工程に参画し、クライアントを含めた関係者と折衝を行うこともできる人」である、ということは、すでにお伝えしましたが、“設計など(ITエンジニアとしての専門性を高める)”と“関係者と折衝”のどちらにフォーカスを合わせるかで、二つの道があります。
まず一つ目の“設計など(ITエンジニアとしての専門性を高める)”場合のキャリアパスとしては、ある分野、例えば、PythonならばPython、ネットワークならネットワークといった風に、特定分野のITスキルを深めて、その分野の権威、スペシャリスト・上級システムエンジニアとなるコースです。
もう一つの“関係者と折衝”を深める場合のキャリアとしては、いわゆるプロジェクトマネージャー(PM)として、プロジェクト全体の統括をする管理者へのキャリアアップです。逆の言い方をすると、IT業界の花形職種と言われるプロジェクトマネージャーですが、システムエンジニアとして下積み時代を積んでから、プロジェクトマネージャー職を任されることが一般的です。
ついでに申し上げると、みなさんにもイメージがあるかと思いますが、一定以上のスキルを保有するシステムエンジニアが、脱サラしてフリーランスとして活躍することも多いです。社内で一般社員から係長、係長から課長といった、キャリアップを目指すだけが道ではありません。
社内で肩書を持ち、そのランクが上がるにつれて、現場への関与が下がってしまうことが多いです。あるいは、会社の経営・運営にも責任を持つことになり、社内政治への関与を含めて、エンジニアファーストで仕事が続けられなくなることもあります。自身が目指す「技術者像」を追い求めるため、会社のシガラミから解放されるため、フリーランスに転向するのは、IT業界では普通のこととなりつつあります。
今回はシステムエンジニアになるために必要なことについて、ご紹介させて頂きました。結局のところ、システムエンジニアに限らず、IT人材は「いま必要な技術力を持っているか」の一点で評価されます。そのため、学生時代は情報系だったとしても、社会人になって以降、自己研鑽を怠れば、「技術力の低いシステムエンジニア」へと転落することもあります。
逆に言えば、学生時代やこれまでの経験に限らず、努力を重ねて技術力を深めると、それに応じて、高い評価を得ることが可能です。業界未経験から、フリーランスとしてお金と時間の自由を得ている人も少なくありません。先が見通せない時代だからこそ、システムエンジニアへの転向は検討価値があるでしょう。